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Je pense, donc je suis.

Je pense, donc je suis.(我思う、故に我あり。)  というか、ただの日記です。

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舞台「カリギュラ」(演出:蜷川幸雄)

去年の秋に東京bunkamura シアター・コクーンで上演されていた舞台「カリギュラ」がWOWOWで放映されていたので、その録画映像を鑑賞。舞台演劇が嫌い、小栗旬もあまり好きじゃない私が録画してまで見る理由、それはもうアルベール・カミュの戯曲だからです。カミュの「カリギュラ」との出会い&思い出は、以前も読書レポの際に書いたけれど非常に強烈でして、それゆえにこの舞台には興味があったのだ。

舞台「カリギュラ」
作:アルベール・カミュ
演出:蜷川幸雄
出演:小栗旬(カリギュラ)、若村麻由美(セゾニア)、横田栄司(エリコン)、勝地涼(シピオン)、長谷川博己(ケレア)、月川悠貴(歌い手・詩人)、塾一久(財務長官パトリシュス)、青山達三(老貴族セネクトュス)、磯部勉(第一の貴族)、廣田高志(第二の貴族レピデュス)、新川將人(第三の貴族カシュス)、宅嶋渓(第四の貴族)、冨岡弘(第五の貴族・詩人)、今村俊一(メレイア・奴隷・詩人)、田村真(ミュシュス)他
収録:2007.11.21 Bunkamura シアター・コクーン


最初、蜷川幸雄が「カリギュラ」を手がけるという話を耳にしたとき、「ああ、いかにも蜷川さんが好きそうな戯曲だな。」でした。蜷川幸雄の手がけた舞台を語れるほど見たわけではないけれど、「タイタス・アンドロニカス」とか「カリギュラ」とか残虐さが印象に残るような悲劇って蜷川さんの十八番という印象がある。でも、私、あまり蜷川さんの演出する舞台が得意ではない。何ていうのかな。おどろおどろしさとドギツさが鼻につくイメージなんだよね。蜷川さんが手がけた野村萬斎の「オイディプス」もドギツくて途中でリタイア。そんな私が上演時間200分の「カリギュラ」を見るとは、人間やればできるの証明のようです。(苦笑)

で、その「カリギュラ」ですが、案の定というか、やはり一筋縄ではいかない難しい戯曲ですね。とにかく、このお芝居は、お芝居上級者向きであることは間違いないでしょう。 これ、興味本位で「小栗旬が見たいから見に行く♪」みたいなノリで見に行くと痛い目に合うことでしょう。やはりある程度カミュの不条理哲学を予習していないと厳しいと思う。実際、原作を読んでいる身でも「難しすぎる!こんなの1回見ただけじゃ理解できん!」と思ったぐらいです。とにかくカリギュラを筆頭に登場人物のそれぞれが自分の哲学を主張し、相手を論破するようなセリフの応酬劇。いわゆる論理的会話劇なので、セリフを聞き取って頭で理解していくのに追いつけるかどうかが鍵。とくにカリギュラの論理は、一般人の感覚とかけ離れた狂人的哲学。それが三段論法で畳み掛けられてくる。そのそれぞれの論理の矛盾に気づいたり、その面白さにたどり着くには、かなりの集中力が必要。正直、何度も集中力が途切れ、睡魔が襲い、話が見えなくなって巻き戻してみました。こんなの難しすぎて、生では見れない。芝居嫌い、芝居初心者な私は生で見て理解するのは絶対無理。爆睡必至。(苦笑) そして、やっぱり私は舞台演劇が嫌いだと痛感した。演じる側には、かなり演じ甲斐のある演目だと思いますが、その演じる喜びに身をゆだねながら、役柄に陶酔しきっている役者を見ていると、なんだか、どんどん醒めてしまうというか、ドン引きしてしまうのよね・・・。(苦笑)

主演の小栗旬君は大熱演でした。これを理解して演じきるって凄いね。ちょっと尊敬。彼の演じるカリギュラは、暴君とはいえ、暴君になりきることへの不安と恐怖がチラチラと見え隠れし、常に自問自答しているような繊細で人間らしさが残るカリギュラでした。小栗旬演じるカリギュラの畳み掛けるような論法のセリフは、まだ悩めるカリギュラが自らの哲学の正当性について必至に自らに言い聞かせている感じがあります。それゆえ、暴君としての迫力や狂気的な怖さよりも、繊細で複雑な人間性を感じさせる人物に仕上がっていました。解毒剤か喘息の薬なのかのやりとりで、最終的に喘息の薬だったとカリギュラが知ったときのかすかに見える驚きと動揺の表情などは、普通の人間の持つ感性をも持っている人物であることをチラっとうかがわせる瞬間でもありました。これで狂気的な怖さや凄味も同時に持ち合わせてくれていれば、さらに拍手喝采でしたが、それはちょっと物足りなくも感じた部分もありました。なんとなく、簡単に反逆して倒せそうな相手に見えたので。ただ、そこまで多くを望むのは贅沢かもね。

ただ、小栗旬、他の役者さんに比べると彼のセリフだけが聞き取りづらいという場面が幾度かありました。とくに、早口で畳み掛けるときの発声と滑舌がイマイチ。「カリギュラ」はカリギュラのセリフが鍵。あのセリフに、カリギュラの哲学がすべて凝縮されているわけで、それを耳で聞いて頭で理解していかないと、この芝居の面白さにたどり着けない。そういう極めて重要な意味を持つセリフが聞き取りづらいというのは、残念。あと気になったのがツバ。飛ばしすぎじゃね?(苦笑) セリフを喋るたびに飛ぶツバが滅茶苦茶見苦しくて気になる!見た目の問題だけではなくて、そのせいで声も聞き取りづらいのでは?と思ったり。まあ、唾は、舞台を生でみている観客には見えないのかもしれないですけど。発声は、さらに磨きをかけてもらいたいところ。

そのほかのキャストもいいですね。足を引っ張る人がいない。若村真由美は、セゾニアの独特の狂信的な不気味さがなんともいえず似合っていました。シピオンのピュアでいたいけな雰囲気もよかったし、強い信念のあるケレアのクールな雰囲気も、エリコンの飄々とした貫禄も良かったです。あと元老院の爺ちゃんたち。皆さん、いい味だしてたわー。脇役とはいえ、さすが舞台俳優といわんばかりの存在感。

舞台の構成としては、「カリギュラ」のキーアイテムの「鏡」を、蜷川氏がどういう風に使うのか興味があったのですが「鏡」は、1幕から鏡張りの空間に原色のネオン管という舞台セット。ちょっと斬新。あのギラギラのネオン管には、妙な違和感を感じましたが、あの鏡で囲まれた空間は、ラストシーンのカリギュラの独白シーンでとてもすばらしく生かされていたように思います。
あとは、小栗旬のスタイルの良さに驚いた。あの美脚(&美尻)。(笑)でも、あそこまでお尻を見せる必要性は感じなかったかな。女装だけで良いのでは?まあ、強烈なインパクトと狂気の沙汰であるイメージは強められていたけれど。

それにしても、ずいぶん前からカリギュラの本は、現在絶版状態で中古本ですらプレミア価格となっておりましたが、今回の小栗旬主演舞台効果でさらに値がつりあがってるのね。「情熱大陸」で取り上げられたし、余計に注目が集まったみたいだね。すごいね、需要と供給のバランスが崩れるとここまで値段が高騰するんだねぇ・・・・。それならいっそのことカミュの全集を買ったほうが安いと思うけど。

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