2006.09.15 Fri
「青の炎」
青の炎 特別版
貴志祐介 蜷川幸雄 二宮和也
アスミック 2003-09-26
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いやはや、これ、非常に悲しくせつない物語ですね。
ストーリーは、簡単に言っちゃえば、家族を守るために殺人を犯してしまった17歳の少年の物語です。最近の青少年犯罪を連想させるテーマですが、いわゆるキレて殺人を犯す最近の若者というのとはまた違っていて、家族を守るため、愛のための行為として殺人を選んでしまった少年の物語。完全犯罪を企てるものの、ひとつの綻びからズルズルと運命が想定外の方向へと進んでいく。その殺人を犯すまで、真相がバレるまでの心理サスペンスっぽくもありますが、でもサスペンス性を期待するのではなく、あくまで少年の揺れ動く心理を描いた青春映画だと思ってみるべき作品。そしてこの青春が、本当になんとも悲しくせつないの。個人的にせつない映画は大好きなので、こういう後味や余韻って好み。本当に見ていて心が苦しくなる映画なのですが、それが不快ではないの。全編において何かが壊れてしまいそうな危うい雰囲気に引き込まれ、それだけにラストのオチに妙に納得しつつ、胸が苦しくなるようなせつない気分で余韻に浸れる映画というのかな。単なるアイドル映画だと侮ってパスしがちなキャストだけれど、案外そうそう馬鹿にしたものでもないなという印象。最後まで食い入るように夢中で見てしまいましたから。
ただ、映画として評価するなら完成度という点では微妙。きっと原作をかなり端折って駆け足で物語を展開させているんでしょうね。セリフによる説明的な部分が多い割りに、説明が十分ではないのです。なので、複線になりうるものが伏線として機能していなかったり、そのせいで展開に無理矢理感だとか矛盾点が見えてしまったりするので、登場人物たちの心理変化に見ている側が追いつけない。映画では描ききれていないものがたくさんあるということが本を読んでいなくてもわかるんですよね。(義父を殺したいと憎むほどのエピソードとか、子供のころの記憶がないあたりとか)なので、映画を見終わったら猛烈に原作を読んでみたくなりました。ちなみに貴志祐介の原作はこれ。
青の炎
貴志 祐介
角川書店 2002-10
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監督は、蜷川幸雄。蜷川幸雄氏の舞台作品は、それほどたくさん見たことがあるわけではないのですが、心の闇の部分に焦点を当てた作品を扱い、ちょっとおどろおどろしい演出をする舞台監督というイメージがあります。この映画自体におどろおどろしさはないけれど、“心の闇の部分”という点で、この作品も蜷川さんが好きそうなテーマだなーとは思いました。映画監督としての手腕はどうなのかな。下手だとは思わないけれど、やはり舞台の人だなと思うフシはありました。独白で説明していくあたりのセリフの使い方とかね。
出演者たちに関しては、やはり功労賞は二宮君ですね。嵐ファンだという自分の中の贔屓目フィルターをはずしてみても、やはり褒めるに値する演技を見せてくれていると思います。公開当初の予告編での二宮君の影のある表情がとても印象的で、私の中の二宮君のイメージは、このイメージで出来上がってしまっていたのですが、やっぱりこの主人公の秀一役は、滅茶苦茶ハマっていました。どこにでもいそうな普通の高校生の身近な雰囲気と、多感な思春期の高校生の持ちえる危ない輝きと、どこか消えてしまいそうな儚さや脆さを併せ持った空気が非常によく出ているし、妙に大人びて冷めている部分と子供っぽい幼稚な部分、強さと弱さ、頭のよさを感じさせる冷静さと稚拙で単純な思考、そういうありとあらゆる対極のものが同居していて、一定バランスに定まらず、揺れ動く思春期の心理みたいなものが、本当に彼の全身からにじみ出ていたし、ビジュアルや風貌にもよく似合っていました。二宮くんの演技力は、実は以前から注目していたのですが、やはり上手いですよ。とくに「静」の芝居が上手い。セリフ回しに関しては、若干舞台調で鼻に付く部分も多少なきにしもあらずで、気になる部分もあったりもしたのですが、「静」の部分の瞳の演技に関しては、私は“日本のジョニー・デップ”の称号を差し上げてもいいと思うぐらい好みでした。ジョニー・デップが「ギルバート・グレイプ」で演じた家族愛と思春期の行き場のない苛立ちとの葛藤に苦しむ虚ろな目に通じるものを二宮君の目にも感じましたから。水槽越しで紀子と心が通い合ったときの表情だとか、刑事さんとの「君のことをもっと知りたくて」といわれたときの表情や目線、そしてエンディング間際での家族3人の朝ごはんのシーンの雰囲気と、その場を立ち去るときの背中で放つ空気とか、同情心を掻き立て、なんともいえない息苦しさを感じさせる表情で、とても切ない気分にさせられましたから。かなり上手いですよ。二宮和也をジャニタレ(アイドル)だからと侮るなかれ!という気分になりました。といっても、嵐贔屓な私が言ってもイマイチ説得力がないですかね?(苦笑)
松浦亜弥の演技は、どうみてもアイドルの域を出ていないながらも、頑張っていたとは思います。原作を未読なだけに、こういう不思議ちゃん系キャラなのかなと納得しながら見ましたし、秀一(二宮君)と紀子(あやや)のやりとりや、プラトニックな心の通い合いは、初々しい高校生の淡い恋という感じが出ていて、ほほえましく、それだけに最後がせつなかったですし。ただラストが松浦亜弥のアップで終わるのは、表現力という点では、ちょっと厳しかったかも。ハンドルを切る直前の秀一(二宮君)の絶妙な表情の余韻を持たせたまま終わらせたほうがよかっただろうに・・・とは思いました。秀一の妹役の鈴木杏が上手だったので、どうせなら、あややと役を入れ替えてほしいなと思ったり。
脇役陣は、刑事役の中村梅雀さんが良かったです。でもあの段階で、「君を信じるよ」なんて、帰しちゃう刑事なんてありえないよね。(笑)義父の山本寛斎は、絶命シーンぐらいしか見せ場がなかったので、なんともいえません。殺されることに納得させられてしまうぐらいの憎たらしさを出せる場があれば、物語にも説得があったのになと思ったり。このへんも原作を読んでみたいと思わせる箇所でした。母役の秋吉久美子は、どうなんでしょう?私は個人的に彼女のセリフ回しが苦手なので、どうも好みではないのですが、色っぽいお母さんではありました。唐沢寿明とか、カメオ軍団は、必要ないでしょ。とってつけたようなコメディ部分が鼻につきました。邦画って、ああいう意味不明に有名どころをカメオっぽく使う義務があるのかしらね。東儀さんの音楽は、とても映画の雰囲気にあっていたし、湘南の雰囲気も儚い青春を象徴するかのような美しさがあって、なかなか素敵でした。とにかく、とてもせつない余韻が残る作品で、ぜひ原作を読みたいと思いました。
ちなみに、この映画の二宮君の写真集も出ているみたいです。この年齢の二宮君を写真集という形で残してくれているのは、ある意味貴重かも。この映画での二宮くんを見ていると、このまま大人にならず“永遠の17歳”でいてほしいと思うぐらいの独特の輝きを放っていました。(※ちなみに収録時は19歳だったそうですけど。)
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「青の炎」
【製作】2003年 日本 上映時間 116分
【宣伝コピー】世界の“NINAGAWA”が描く――17才の魂の鮮烈な輝きと挫折――
【クレジット】
監督: 蜷川幸雄
原作: 貴志祐介 『青の炎』(角川文庫刊)
脚本: 蜷川幸雄
共同脚本: 宮脇卓司
撮影: 藤石修
美術: 中澤克巳
編集: 川島章正
音楽: 東儀秀樹
照明: 渡辺三雄
録音: 中村淳
出演: 二宮和也、 松浦亜弥、 鈴木杏、 秋吉久美子、 中村梅雀、 山本寛斎
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二宮和也写真集 青の炎
西村 彩子
角川書店 2003-03
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コレクターズ版DVDはニノ用とあやや用で2種類あるみたい。あやや版の表紙は、なんだか「スケ番刑事」みたいで作品のイメージと全然違うのが笑える。青の炎なんだから背景も青にすればいいのに、なぜにピンク?
青の炎 <二宮和也コレクターズエディション>
貴志祐介 蜷川幸雄 二宮和也
アスミック 2003-09-26
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青の炎 <松浦亜弥コレクターズエディション>
貴志祐介 蜷川幸雄 二宮和也
アスミック 2003-09-26
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| 映画 | 23:59 | comments:8 | trackbacks:0 | TOP↑










力入ってますね〜〜すばらしい!
二宮君、この映画みてものすごーーく気になる存在になりました。ほんと、うまいですわ!
そして、この写真集も実はちょこっと気になってます(笑)。
私もまた深夜に一人っきりで映画も見直してみようと思います。原作もおすすめ(^^♪
| うるる | 2006/09/16 10:24 | URL | ≫ EDIT